痔について
痔かな?とおもったら
一般的に肛門周囲の病気を痔と言いますが、一口に痔と言っても色々な疾患があります。
肛門科の三大疾病と言われるいぼ痔(痔核)、切れ痔、痔瘻が主ですが、それ以外にも湿疹やおでき(粉瘤)、怖いものでは肛門や直腸の癌もあります。
また、それらに対する治療も軟膏や飲み薬でよくなるものから注射で治るもの、手術が必要なものまでいろいろあります。
見せるのに抵抗のある場所ですが、専門医師の的確な診断をもとに進行度に応じた治療を受けることが大切です。
自分で見えない場所なので調子が悪くなると大変不安になるのですが、当院では実際にどうなっているのかを見ていただいて病状を説明し、また以前の状態と比較することで治療の効果を確認していただくよう心がけております。
痔の三大疾患
痔の三大疾患といわれるものにいぼ痔(内痔核)、切れ痔(裂肛)、痔ろうの3つがあり、肛門部の病気のほぼ9割はこれらによるものです。
これらはすべて、直腸の最後である肛門管(肛門括約筋に囲まれている約3cm程度の範囲)に不都合が発生したものです。
肛門管は普通の状態では直視できないので、専門医による触診による診察が重要です。
内部を見るのに普通の大腸内視鏡では十分観察できないので肛門鏡という器械を用いて診察します。
また必要に応じて専用のエコーも用いて診察することもあります。
これから痔の三大疾患について、直腸から肛門の断面図で説明していきます。
いぼ痔(内痔核、外痔核)
いぼ痔(内痔核、外痔核)
俗に言われるいぼ痔には、肛門の中にできる内痔核と外側にできる外痔核とがあります。
いぼ痔とは肛門管の皮膚や粘膜の下には静脈瘤を含む軟らかい組織が分厚くなることで部分的に盛り上がったものです。
基本的に軟らかいものなので、うっ血するとかなり大きくなり、また垂れ下がって脱出してきたりします。
外痔核
外痔核は肛門の外側(目に見える範囲)のいぼのことで、主な症状としては腫れて違和感が出たり、血栓(血の塊)ができることで硬く腫れて痛みが出ることがあります。
基本的には手術をせずに薬の治療だけで治るものですが、場合によっては手術をするほうが良いこともあります。
内痔核
内痔核は肛門の内側、歯状線(皮膚と粘膜の境界線)付近から中にできるものです。
症状としてはたるんで脱出したり粘膜部から出血することが主ですが、場合によっては切れ痔の原因になったり脱出することで耐えがたい激しい痛みが出ることもあります。
できた場所や大きさ、症状によってさまざまな治療法の選択枝があります。
また、癌などの悪性疾患のように病変部をすべて切らないといけないものではなく、切る際には術後に不都合が生じないように切る範囲や切除の方法をよく考えなければなりません。
切れ痔(裂肛)
切れ痔とは肛門管の皮膚が何らかの原因で傷が入った状態をいいます。原因としては硬くて大きな便が出るときに広がりすぎて切れる、軟便が勢い出るときに切れる、また便が出るときに肛門管が裏返るように広がり、伸びの限界を超えることで切れることもあります。
切れ痔は比較的簡単に治るものが多いのですが、慢性化する場合や習慣的に切れる場合(同じところが何度も切れる)もあります。なかなか治らないあるいは繰り返す場合は、排便習慣による負荷、長い間切れ痔があったことでの肛門管の変形、感染などが原因であることがあり、その原因を取り除くことが必要です。原因は簡単に診断できないものが多く、治療を行って反応を見ながら薬の調節をする場合も出てきます。場合によっては手術による治療が必要となる場合もあります。
当院では治療前、治療の効果の確認を患者さんと一緒に見て確認してもらいながら納得したうえで治療を受けていただけるよう心がけています。
痔ろう(痔瘻)
痔ろうとは肛門管の一部、主に歯状線(粘膜と皮膚の移行部)に感染を起こし、その結果ろう孔というアリの巣のようなトンネルができることで腫れたり膿がたまる状態です。
痔ろうは一度できてしまうと根本的な手術をしないと再発する可能性があります。
痔ろうの治療では、体の中を通っているトンネルをなくすことが目的となりますが、正確に治療を行うためにはトンネルの通り道を正確に診断する必要があります。
また手術の際にはできるだけ括約筋の機能を損なわない術式の選択が必要です。
ジオン注について
内痔核の硬化療法用の薬として2005年よりジオンが用いられるようになりました。
大変有効な薬で、これにより以前なら切除(痛い手術)をしないといけなかった痔に対しても比較的痛みを少なく治療できるようになりました。
ただ、注意しなければならない副作用もあり、またジオン単独では再発のしやすい形態のいぼ痔もあります。
当院ではジオン注を用いることでできるだけ痛みが少なく満足度の高い手術を受けていただけるよう心がけております。